スポンサーリンク

正しい読書の仕方。森鴎外「最後の一句」の深読みを例にして

注目記事

深読みするということ

あなたは読書をするとき、どんな風に読んでいますか?

また、読み終わった後どんなことをしますか?

僕は文学部に入るまで、読書について深く考えることはありませんでした。

しかし文学部のさまざまな講義を受けるにつれ、「読書とは何か」ということがだんだん明らかになってきました。

「読書の醍醐味は深読みし、行間を読むことにある」

このことに気づいてからは小説に限らず、漫画なども一度読んだだけで終わらせずに気になったことや「なぜ?」「どうして?」と少しでも思ったことについて調べる癖がつきました。

そうやって調べた後でもう一度読むとよりいっそう本の面白さが引き立つのです。

今回はそうして僕の中で面白さが何倍にも引き立った小説、森鴎外の「最後の一句」の読み方についてご紹介したいと思います。

あらすじ

あらすじやおおまかな解説についてはこちらの記事をご参照ください。

授業でもよく取り扱う短い小説 森鴎外著「最後の一句」はさくっと読める...

「マルチリウム」

物語の終盤で、「マルチリウム」という洋語が登場します。

高校のときこの小説を授業で扱いましたが、そのときは「マルチリウム」については一切触れられませんでした。

僕も当時はこの言葉になにも疑問は感じませんでした。

しかし大学生になり読書の仕方について知ってからもう一度この小説を読んだとき、「マルチリウム」についてなんとなく違和感を持ったのです。

まず「マルチリウム」を辞書で引いてみました。

ほとんど、というかすべての辞書で一番に説明されるのは「殉教」「殉教者廟」「殉教者の墓」。

しかしながら本文中では、すぐ後の「献身」という訳語と並べられ、一見「マルチリウム」=「献身」としているように思えます。

逆に「献身」と訳される洋語は「デディケーション(dedication)」「ディボーション(devotion)」

もう少し長い言葉なら「セルフサティスファクション(self-sacrifice)」というのもありました。

これはどういうことか。

僕なりに考えをめぐらせてみて、これは「殉教」=「信ずる宗教のために死ぬ」ということが含意されていることが重要なんじゃないかと思いました。

いちの「殉教」

「殉教」は自分がそのとき正しいとされる宗教からは異端とされる宗教、宗派を信じていたが故に、またその信念を曲げなかった故に殺されてしまうことです。

これはいちが父という神の無罪を信じているが故に、幕府という正しいとされるものに殺されようとすることにぴったり合致します。

「献身」という訳語だけではここまで深読みすることはできません。

このことから「マルチリウム」を確かな意図があって用いたことがわかりました。

さらに深読み

もっと深読みしてみましょう。

マルチリウムって言葉、何か別の言葉に似ていると思いませんか?

ヘリウム、マグネシウム、アルミニウム、、、

そう、元素の名前です。

鴎外はドイツ留学から帰国した後、軍医として働くかたわら小説を執筆していました。

また鴎外は、幼い頃から勉強熱心で当時最年少(12歳)で今の東大に入学しました。

そして19世紀には既に56種の元素が発見されていました。

このことから鴎外が元素の素養もあったと推測されます。

そう考えるとこの「マルチリウム」という語感を気に入って、人間の精神という物質が「マルチリウム」という元素を含んで構成されているというニュアンスも読み取ることができます。

まとめ:日本よ、これが読書だ

作者が確実にそういう意図を書いたかどうか、ということは作者に聞いてみなければはっきりとしたことはわかりません。

でも確かな根拠をもって考察することは、決して間違いとは言い切れない読み方だと思います。

「ああ、面白かった」で終わらせてしまうのはとてももったいないことです。

ジャンルとして「ただの娯楽」だとしても、その娯楽をもっと面白くするには「こういうことじゃないか」「いやこういうことかもしれない」と試行錯誤して考察を繰り返すことが必要だと思います。

映画や漫画だって同じことです。

お金も払って観たものだし「なんかよく話がよくわかんなくてつまんなかった」で終わらせるのは、惜しくないですか?

「なぜつまらないと思ったのか」「どうしてあんな結末になったのか」

「つまらない」というのはそうやって考察して後で初めて言えることだと思います。

「ここでこういう展開になるのはこれこれこういうことからだと思われるが、これはこんな根拠から考えるにあまりに稚拙で辻褄の合わない無茶な構成である。加えてこんな根拠もあって……」

というようにこれだけで立派な論文、あるいは感想文になるんです。

これを中学生や高校生が読書感想文として書いたら先生はびっくりすると思いますし、社会人だってブログをやっているなら立派なひとつの記事になります。

ぜひ読書の醍醐味を知って、読書の楽しさ面白さをよりいっそう深いものにしてみてください。


スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする